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草島進一の「持続可能な鶴岡」日記

kusajima.exblog.jp

CPR 保全、保護(維持)、回復の定義ーデビッドブラウアー氏の講演録より

生物多様性の国際会議がはじまりましたが、
Conservation 保全   
Preservation 保護
Restore 回復
の定義をおさらいしておきたいと思います。

デビッドブラウアー 1998 ブループラネット賞受賞演説より。
http://www.af-info.or.jp/blueplanet/list.html


地球のためのCPR―「修復型経済」への行動原則

私たちがやっと思いついた質問の一つには、例えばこういうものがあります。「地球に害をなすのでなく、
益となるような経済をどうやってデザインするか」。私は何年もの間、アメリカのあちこちで、地球のため
になるような活動を1年間でいいからやってください、「地球のためにCPRの1年を!」と聴衆にお願いし
てきました。CPR とは普通、“心肺蘇生措置(Cardio-Pulmonary Resuscitation)”の意味で、患者の心臓や肺が停止したとき蘇生させる救命方法です。私の場合、患者はほかならぬ地球です。私の言うCPR とは、保
全(conservation)、維持(preservation)、修復(restoration)によって、患者を蘇生させることです。どの講演会でも、聴衆は私の考え方に賛成しましたが、大半の人は、地球のためのCPR を実行していません。彼
らは単に仕事をしているだけです。しかし、もし経済のあり方が“修復型経済”になれば、ビジネスを行
う過程の中で、地球のためのCPR が起こってくるはずです。

CPR のC は、保全(Conservation)です。私たちは、できるだけ少ない資源から現在より格段に高い生産
性をあげる必要があります。日本は省エネルギーの世界的リーダーです。エネルギー効率はアメリカの2
倍に達しています。もし日米両国が協力すれば、もっと効果を上げることができましょう。アメリカの建
築家ウイリアム・マクドナフは、自然のシステムにおいては「廃棄物は食物である(waste equals food)」と
言っています。つまり廃棄物という概念は存在しないのです。先見の明のある会社なら、廃棄物が資源に

なり得た、つまり産業プロセスにとって原料―食物になり得たのに、それを埋め立てたり燃やしたりして
処分したことは、“廃棄物をムダにしてきたことだ”と分かっているはずです。公害は、非効率の別称です。
お金を払って原料を買い、そしてそれを捨てているのです。有機系廃棄物なら、土や家畜飼料として売る
ことができるでしょう。無機物質は、生産のプロセスに再び環流して原材料にする、いわば閉じた回路に
置くことができます。食物連鎖に生産的に入っていく、つまり自然または工場に再び戻って行くような製
品のデザインの仕方や原料の使い方を工夫することによって、利益のチャンスも生まれてくるでしょう。あ
るスイスの繊維メーカーが、ウイリアム・マクドナフの助言によって有害な化学品を一切使わない製造法
に変えて、工場廃水を清浄にしたため、地域の公害査察官が驚いたと言う話もあります。この会社の次の
プロジェクトは、製造用水を工場の外部から取水もしなければ外部へ排水もしない、完全に閉じた回路で
使用する方式だと言うことです。

CPR のP は、維持(Preservation)です。もし私たちが自然界からデザインの知恵や生態系のサービスを
引き出したいのなら、生態系をそのまま維持しなければなりません。自然のままの生態系が私たちに与え
てくれるものは、世界中で最も優れた、コストのかからない水質浄化であり、あるいは洪水制御、虫害制
御、穀物受粉、気候制御、土壌造成、貯水であり、その他の多くのサービスです。ニューヨーク市では最
近、最もコストの安い浄水方法は、市民の飲料水の源となっているアディロンダック山地の水源流域を買
い取り、維持することだと言う方針を決めました。アメリカの他の多くの都市はいまや、水を清浄にする
ために生態系を維持する政策をとるようになってきました。その方が、水処理施設を建設するより何百万
ドルも安くつくからです。対照的な例が、タイで起こりました。タイでは森林伐採によって河川が汚染さ
れ、首都バンコクは地下水に過度に頼らざるを得なくなりました。その結果、バンコクは地盤沈下し始め、
今では海面よりも低くなりつつあります。
もし私たちが自然から学ぶのがあまりにも遅すぎた場合、いざ自然に聞きたいと思ったときには、解答
を与えてくれる自然の一部はすでに失われているかも知れません。例を挙げましょう。私たちが「人間は
がんなどの病気で死ぬのに、サメの多くの仲間は、なぜがんにならず大半の感染症にもかからないのだろ
うか」と問い始めたのは、つい最近のことです。ある医者がこの疑問を提起し、その結果、ある種の小型
サメに新種の強力な抗生物質を発見したのです。しかし乱獲によって、サメは世界中で数が減っていまし
た。ときにはあのトレードマークのヒレを採るためだけに殺されているのです。世界に内蔵される貴重な
情報は、遺伝子と種の多様性という“銀行”の中に保存されていますが、世界中で毎日40 から100 の種が
絶滅しつつある今、私たち自身が破産してしまうのも間もないことでしょう。


R は修復(Restoration)です。修復作業は利益の出る仕事のはずです。歯医者や医者に尋ねてみればお分
かりになるでしょう。もっと多くの人が地球を診る医者として、地球という身体を治療し、十分な診療代
を受け取るようにならなければいけません。修復型ビジネスは、単に持続可能性、つまり“害を与えない
こと”に留まらず、私たちが受け継いだものよりもっと多くの自然の美しさと資源を残すことによって、未
来の世代に大きな贈り物をすることになるのです。そのように意義のある仕事は、地球修復の作業に従事
する人々の精神を高揚させることにもなるでしょう。

私たちの経済を、人間にも地球にも有益なものにする修復の試みは、膨大な改革プロジェクトですが、そ
れはすでに多くの場所で始まっています。アメリカでは、バーモント州の2人の改革者ナンシー・トッド
とジョン・トッドが、汚水処理方式を従来の浄水場施設から、一連の多様な生物を利用した総合的生態系
方式に替えることによって、自然の資本を修復する方法を見出しました。名付けて「リビング・マシン」と
いいます。リビング・マシンは、塩素を使ったエネルギー集約型の汚水処理に代わって、植物、動物、昆
虫、微生物が共同で働いて水質完全浄化を行います。費用は従来と比較すれば僅かですみ、施設は温室と
見違えるように清潔です。
ニューヨークからサンフランシスコにいたるまでのアメリカの都市の貧困地区で、見捨てられた土地を
利用して、食料と収入を得る道を拓いた人達が、一種のコミュニティを生み出しています。
世界に目を向けると、インドと南米と言う遠く離れた2つの大陸で、先見の明のある科学者や地域住民
たちが、地球を“修復”する機会を活用して創造的で充実した生活を送る実例を私たちに示しています。南
米コロンビアのガビオタスとインドのオーロビルの2つの村で、彼らは誰からも見捨てられていた不毛の
土地で活動を始めました。今では2つの地区とも、緑濃い森林と多様な生物相が蘇り、人々が再びこの地
に戻って、新たに復活した自然の富を損なわないような生活を送っています。
by stern888 | 2010-10-10 11:44
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